オレンジ
「リンは?」
パッと笑顔を作って、光輔くんが私に向き直る。
「私?」
「うん。好きな人、いないの?」
「い、いるけど…」
「うまくいきそう?」
「…望み薄、かな。」
そっか、と答えた光輔くんは、私の手を握って、
「僕は、応援してるよ!」
と、言った。
「うん。お互い頑張ろう」
私が答えると、光輔くんは嬉しそうに笑っていた。
――悩みってのは、吐き出すとスッキリするもんだ。
単純にそう考えた私は、涼輔さんの部屋をノックした。
「はい。…鈴ちゃん、どうしたの?」
いつもの優しい笑顔でドアを開ける涼輔さんに、思いきって尋ねてみた。
「何か、あったんですか?」
きょとんとした涼輔さんに、続けて言う。
「何か、寂しそうな顔をしていたような気がしたり…しなかったり…」
急に何やってんだ私、と我にかえってしどろもどろになる。
「…」
黙っている涼輔さんに、いやあのすみません、と背中を向けると、
「どうぞ」
と、部屋に促された。