オレンジ

「…かわいそうだと思う?」


俯いた私をみて涼輔さんが私に問いかける。


顔をぶんぶんと横に振ったものの、何を言ったらいいのかわからない。



「兄さんも、光輔も、きっと洋輔も、みんな心の中に悩みや苦しみ、悲しみだって持ってるんだ。でもそれを、わざわざ言ったりはしないだろう?」

窓の外を見ながら、涼輔さんが言う。


「何故だかわかる?」


顔を上げた私に、静かな笑顔を向ける。



「それを言うことで、プラスなものは何一つ生まれないからさ。鈴ちゃんが今、とても悲しそうな顔をしているようにね。」



私の頬を撫でながら、涼輔さんが続ける。



「鈴ちゃんは、とても優しい子だ。だから、人の痛みを自分の痛みのように感じてしまうんだろう。君に悲しそうな顔はさせたくない。」



だから僕は言わないよ、と言った涼輔さんの笑顔は優しく、でもとても傷付いているように見えた。




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