オレンジ
恋の花咲く乙女心
「おはようございます!」
あれから何日も過ぎ、季節は夏になろうとしていた。
「おはよう、リンちゃん」
ハムエッグを焼きながら宗輔さんが優しく微笑む。
「リン!おはよ!」
新聞を取ってバタバタと戻ってきた光輔くん。
「おはよう」
にっこり笑いながらダイニングに入ってくる涼輔さんと、相変わらず何も言わないけれど私の頭をポンと叩いて牛乳を取りにキッチンに入る洋輔さん。
いつもと変わらない朝。
それがとても幸せだと思う。
心の内に秘めた色々な事情を知ったことで変わったことといえば、この家を、この人達を、以前より一層大切に思うようになったということだけだった。
とにかく、単純な脳しか持ち合わせていない私は、誰かの為になろうと背伸びをするのはやめた。
そのかわり、いつも元気に明るくいようと決めた。
――この家の、大切な人達が、必要以上に傷付いてしまわないように。
「美味しそう!」
にっこり笑って、湯気の立つコーンスープや軽く焦げ目のついたトースト、焼けたばかりのハムエッグが並んだテーブルにつく。
とても爽やかな空気の、穏やかな朝食。
何か、いいことがあるかもしれないな、と何となく思っていた。