オレンジ

「さて、自己紹介が遅れましたね。」



キッチンの火を止め、お玉をおいた素敵変態お兄さんが、リビングのソファに腰をおろす。


いい匂い。カレーかな?


鼻をひくひくさせながら、私も反対側のソファに座った。



「僕は、藤代宗輔。よろしくね、リンちゃん?」



「あ、はい。よろしくお願いします…」


慌てて頭を下げる。
とりあえず色々聞きたいことはあるけど、一番気になっていることを聞いてみた。



「あの、ここの大家さんって、奥様ですか?」



きょとんとした顔で藤代宗輔さんは答える。



「いや、僕は独身だよ?」



事態の飲み込めない私が、目を泳がせていることに気付き、



「僕が、ここの大家なの。」



と、にっこり笑った。



「へ?」

き、聞いてないよ…


アホみたいな顔で聞き返す私を見て、フッと優しい顔をしながら藤代さんが続ける。



「君のご両親が契約した時は、アメリカから一時帰国してた母親が対応したんだよ。大家が僕であることを説明し忘れたみたいでね。家の持ち主である僕の両親は仕事の都合でアメリカに赴任してるんだよ。」



あぁごめんねお茶も出さずに、と途中でキッチンに入って冷たい麦茶を持って戻ってきた藤代さんは、更に続ける。



「僕は長男で、物書きをしていて家を滅多に空けないから、一応大家をすることになってね。これでも26歳の独身貴族。あ、僕のことは宗輔でいいからね。」


軽い調子で次々と説明は続く。





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