透明な星
1『王子様到来』
少女は、昔からお盆になると毎年母方の祖母の家に家族で遊びにいっていた。
そのたびに、少女は祖母から天国にいる祖父とのノロケ話を聞かされた。
『うちのひとは、結婚式のときに私を無理矢理連れ出したねぇ 相手のひともうちの家族も大騒ぎでさあ そりゃあ金持ち同士の結婚式で、ボロボロの服を着た男が花嫁を連れていっちゃうんだもん 叔父さんなんか泡吹いちゃってね 私はね、そのとき思っちゃったわよ、白馬に乗ってなくても、キラキラ綺麗な洒落た服を着てなくても、このひとは私の王子様だって』
お盆になるたびに祖母は楽しそうに少女にそう話してくれた。
幼い少女は目を輝かせて祖母の話を聞いていた。
(あたしにも、あたしだけの王子様がいるのかな)
夢見る少女はそう信じて10年間生きてきた。
幼い頃の願いだったその思いは、いつの間にか確信となって17歳の誕生日を迎えた少女の心に植えついていた。
少女の名前は上谷志保。
これは日々王子様を夢見る、少し強気なお姫様の話である。