『降下を志願する』
「やめだ、やめ」

賭け金をシュガートに押し付けて、ゴードンは席を立つ。

「ツキがねぇ。これ以上やったら煙草買う金もなくなっちまう」

「違いない。ここでツキ使い果たしたら、明日鉛弾を浴びるほど食らいかねない」

シュガートが縁起でもない事を言って笑った。

「不吉な事言うな」

顔をしかめるゴードン。

だが、本気で不吉などとは思っていなかった。

俺達はデルタだ。

血の小便流してまで地獄の訓練に耐えて、米軍でも精鋭中の精鋭とまで呼ばれる最強の部隊。

少数だが、どの国のどんな部隊とだって互角以上に渡り合う自信がある。

装備も技術も最先端。

こんなアフリカの辺境の国の民兵如きに後れを取るなんてある筈がない。

「でも油断するなよ」

シュガートが急に真剣な顔をする。

「ソマリアの民兵の奴、弾が切れたら石投げてくるからな」

「ぷ…はははははははっ!」

真顔でそんな事を言うものだから、ゴードンは笑ってしまった。

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