絶愛
「何処に行くの?」

「海でも、見にいこうか?」

穏やかで、優しく私に話しかけてくる。



吟君達は、年下と言う事もあるのかもしれないけれど、怖いって騒いでいる程、恐くはなかった。


むしろ、紳士的にさえ感じる。


だけど…



今の私には、そんな事はどうだって良かったんだ。


だって…


お酒の酔いが今頃急に回ってきて、本当に気持ち悪かっから。



「美沙ちゃん?」

「…はい?」

「彼氏とかいないの?」




その質問に少し考え込んだ。


だって




私の中では、あやふやな存在がいたから。

そのあやふやな、存在とはもう、一ヶ月前には私から、連絡を絶ちきったつもりでいたから。


「いないよ。」

「そっかぁ。」



そう言うと、雅彦は突然、車のスピードを上げはじめてた。








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