絶愛
「美沙ちゃん!こちらのテーブルお願いします。」

黒服に促され、新規のテーブルについた席には、体型のよい男が3人いる。

私の他に後二人席に付く事になった。


「山下さん。新人の美沙ちゃん。入ったばかりだからお願いね」


私より一つ年下だけど、ここのクラブで先輩の香織ちゃんが、少し緊張気味の私を紹介する。




「可愛いね?いくつ?」

「19才です」


「この世界は初めて?」



優しい笑顔が私の緊張を解きほぐす。




「じゃあ、僕が最初のお客になるよ。」





初対面の私に、いきなりそう投げかけて来た。

これが、山下さんとの出会い。






山下さんは宣言通り、私が出勤の日には、必ず通いつめてきた。





時々、高価な物もプレゼントをしてくる事もしばしば。
そんな時は決まって、こう言う。




「君は僕の大切な人。」




そんな山下の優しさが、段々、重苦しい事に感じる回数も増えてきた。

元々夜の世界に、長くいるツモりもなかった。


夜の世界に入ったのは、ただひとつ。





母の借金を返済が目的だったから。





彼とは、恋人同士と言う体の繋がりがなく、いまいち私の中で「好き」と言う思いも特にはない。





山下の想いが、日増しにエスカレートをしていくのが苦痛に感じる。





もう、限界。


電話番号を変え


そして店を辞め、


彼の前から姿を消したはずなのに。






それなのに…









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