キャンディ
まぁ、ぶっちゃけてしまえば、どこの剣道部も『青春の汗』などという美しいものはない。

それは『目に染む(しゅむ)ニオイ』ぐらいのイメージを持たれているものだ。

実はルイ自身もその『目に染む(しゅむ)ニオイ』と、剣道の『面』を取ったときのぼさぼさ頭にスポッと多覆い隠された、その人並みはずれた容姿に気づくことはまず無かった。

しかしこの人懐っこく、すばらしく頭の回転の速い少女は、同性の敵を作ることもなかった。

それどころか、努力家の女子剣道部の部長として厚い人望を集め、そして誰もが気づかぬまだ磨かれてはいない宝石のような容姿の他に、誰もが彼女のめがねの後ろの意思のある大きな瞳を愛おしく思った。

女としてはいかがなものか、遅咲きなその少女は、世間が女子高校生に対して持ちがちなイメージ、すなわち、軽い風貌、そして性に対するモラルを軽やかに打ち砕いてしまうような、そんなメッキのように浅はかな価値観とはほど遠く、まるでそんなことは違い星のことのように剣道に明け暮れる毎日を彼女は過ごしていた。
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