キャンディ
そこへやっと一台のSUV車がとまった。

その車の窓が開き、男が助手席まで詰め寄って顔を出した。

「アー ユー オーライ?」

なんとなく記憶にある男だった。

「警察呼ぼうか?」

今度は男は車から降りてルイに近づいた。

暗くて車からは良く見えなかったが、ルイのその有様に男は驚き、あわててルイに自分の上着を着せて、抱きかかえて車の助手席に乗せた。

「ね、心配しないで。すぐに病院へ送り届けるから。」

ルイはその黒く大きな目をうつろに見開いたまま、首を横にふった。

しかし、車はアッパータウンにある病院へと向かった。

病院に着くなり、周りの目がその男に釘付けとなった。

実はルイを助けたこの男、今ヒットを続けているスパイ映画の主演俳優だった。

映画俳優、ケビン.キーマンといえば、最近の『ピープル(雑誌)』に、『THE‐セクシエスト.アクター、トップ5』に名前を連ねるなど、顕著に頭角を現してきていた。

実はその夜も、生番組の『THEレイト.ショウ』に映画宣伝のため出演した帰りに近道しようと通った道の途中だった。

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