キャンディ
しかし「異性とは遠くかけ離れていた」、とはいっても、普通に男子生徒とも口をきいていたし、彼らも『めがねのぼさぼさ頭、みなに好かれる女剣部長』に対しては、異性を見ると言うよりは、友情を育むクラスメートといったところだった。

ところがある夏の日、クラブの後輩が何を思ったか雑誌の特集に彼女のスクール水着の写真を送り、それが雑誌に掲載されてしまったのだ。

その直後、あるモデル事務所から彼女に声がかかった。

そしてその瞬間、部員全員、いや、学校中がキセキを感じた。

彼女も、丁度受験などうっとおしいと思っていたこともあって、できなくなった剣道にとってかわって美しくなろうと懸命に努力した。

シャワーを浴びて清潔を保ったうえで、化粧や髪をセットすることなどを覚え、そのままモデルの世界へと転進し、活躍していくこととなる。

それは誰の目から見ても一匹の芋虫が、美しいアゲハチョウに変わる瞬間なのだと思った。

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