キャンディ
その時さくらは全てを思い出していた。

亮介と過ごしたやさしい時間。

海の中で亮介の冷たい体を見て自分の細胞が崩れていくのを感じた瞬間。

記憶をなくしてからケビンがずっとそばにいて愛情を注いでくれたこと。

そしてヤンが渡したあのハロッズのくまのぬいぐるみのことを。

撮影隊のナースがかけよって急いでさくらの止血を行った。

そして、スタッフに横で顔色を失っていくケビンの左足を止血するように支持した。

二人ともなんとか命はつなぎとめておけるようだ。

かけつけた救急隊員がケビンからルイを放そうとすると、ケビンは泣きじゃくり、狂ったようにその手を何度も跳ね除けた。

そして二人はヘリコプターでバハマ‐キリスト教病院へと運ばれた。

搬送中もケビンは握ったルイの手を決して離そうとはしなかった…。

< 46 / 66 >

この作品をシェア

pagetop