キャンディ
― 今イーサンに『キャンディ』の場所の秘密を伝えなければケビンが殺される。

ケビンは最初からイーサンたちをだましていたのだ。

ルイを裏切ったわけではなかった。

それがわかったのは、ケビンが自分の手の平を指で指すサインを送ったときからだった。

ルイはこの二人だけのサインをいつも愛おしく思っていた。
それはケビンがさくらと会話するには欠かせないものだったから。

今までさくらが指で書くこの一文字一文字をケビンは必ず欠かすことなく読んだ。

それだけケビンはいつも『さくら』という人物に全神経を集中させ、大切に思ってくれていたんだと、ルイは思っていた。

そしてそれは紛れもなく、ケビンの愛の証でもあったんだ。





『くまのぬいぐるみ。あれはイギリス、ハロッズのクリスマス‐ベア。クリスマス‐ベアは毎年その年用のオリジナルが作られていて、次の年に量産されることはない。ヤンが私にくれたのは1969年のもの。』

「あぁあ、あんな汚い目玉くりぬかれたくまなんぞ、捨てちまってたよ。」

メモを読んだイーサンはまたもや薄気味悪くルイに微笑んだ。

さっそっく丸坊主の男がオレンジ色の矢印が印象的なイギリスの輸送会社BIFA(ブリティッシュ‐インターナショナル‐フレイト‐アソシエーション)のコンテナをいくつか見つけ出した。

そしてそのうちのひとつに1969の番号が書かれているものを見つけた。

クレーンを使ってそのコンテナをおろそうとしたが、他にも上に積み上がっているコンテナもあり、以外と時間がかかった。

待っている間、イーサンは二本目のタバコに火をつけた。

「それにしても、あんたは男運ないよな…。」

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