キャンディ
まるで『ムーンシャイン(禁酒政策が採られていた1920年代のアメリカで違法に作られていたメタノールが入ったお酒。)』の現代バージョンであるかのように、使用後の健康状態は決して約束されてはいないだろう。

まぁ、どのドラッグをとってもそうであろうが。

そしてこの男、前回も同じものをロサンジェルスでさばいたものだから、『サシー』にはひときわ覚えが悪いときている。

この『サシー』とはロスのサウス ダウンタウンを牛耳っている麻薬組織の愛称だ。

サム.シン.ヨンキ、韓国系のボスがこの組織を束ねている。
それもこのボス、若く優男にして切れもの、そして冷酷で、愛称の通りどんな相手でも人を食って掛かるような物言いをする。

そして今このサシーがヤンを狙っているらしい。

ヤンはそれでも金のためにわざわざリスクを冒してまで、アメリカへ行こうというのだ。

ヤンにとって今回の取引はとてつもなく大きかった。

客はNYマフィアのバリー.コステロ、表向きはジャージー市で一番大きな中古車販売会社の社長であるが、その裏ではハドソン川の麻薬の売買を仕切っているマフィアのドンである。

ヤンはサシーのこともあり、もともとアメリカン.マフィアを甘く見くびっていたので、今回もいつもの方法で金だけ取ればさっさと行っちまえばいい、なんて軽く考えていた。
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