雨に恋した華
「あたし、頑張る……」


あたしは胸元で携帯を握り締めながら、静かに呟いた。


「うん。応援してるから」


千晶は優しく微笑みながら言って、ゆっくりと歩き出した。


遠くの方で少しだけ明るくなっている空が、まるであたしの心の中みたい。


ずっと見ていた彼の事をやっと少しだけ知れた事で、彼への一歩を踏み出せたような気がした。


彼の名前も、携帯の番号も、メールアドレスも…


あたしにとっては、大切な大切な宝物みたいに思えたんだ――。


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