雨に恋した華
「ここで大丈夫?」


「うん……」


小さく笑って頷いたあたしは、虹ちゃんにお礼を言った後、ドアを開けようとした。


その瞬間、彼に手首を引っ張られて、運転席に引き寄せられた。


「紫……」


虹ちゃんはいつもよりも少しだけ低い声で囁きながら、あたしを抱き寄せた。


彼の腕の中が温かくて、切なさが増す。


必死に涙を堪えていると、虹ちゃんが体を離した。


そして、彼はゆっくりと顔を近付けて来ると、あたしの唇を優しく塞いだ。


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