雨に恋した華
「もう、帰るの……?」


「うん、夕方からバイトだから」


控えめに訊くと、虹ちゃんが笑顔で答えた。


心無しか、その笑顔はいつもと違う表情にも見えたけど…


いつもと同じ口調に安心感を覚えたあたしは、それを気に留める事も無かった。


「紫は、この後も片付けがあるんだろ?気をつけて帰れよ。じゃあな」


虹ちゃんはそこまで言ってから、サッと踵を返した。


「あっ、虹ちゃん!待って!」


あたしは、慌てて彼の事を呼び止めた。


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