雨に恋した華
あたしの表情で察したのか、千晶が笑顔を向けた。


「行っておいで」


その言葉に大きく頷いて、弾かれたように走り出した。


ビルの隙間から漏れる夕陽が、街をオレンジ色に染めている。


決心が鈍らないうちに、虹ちゃんにこの気持ちを伝えたかった。


通い慣れた道なのに、いつも彼に迎えに来て貰っていたから、今日は違う景色に見える。


雑踏の中を走っていると、流れる景色とシンクロするみたいに虹ちゃんとの思い出が蘇って来て、何度も胸の奥が熱くなった。


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