雨に恋した華
「紫のせいじゃないよ」


あたしの心を見透かしたのか、虹ちゃんが優しく笑った。


「紫は何も悪くない。それに、傷付けたのは俺の方だし……」


「虹ちゃん……」


「ごめんな……」


虹ちゃんは、あたしに真っ直ぐな視線を向けた。


言葉に詰まって、声が出ない。


声を出せないあたしは、精一杯首を横に振った。


虹ちゃんを想うと切なくて、胸の奥が熱い。


「……あたし……」


呟くように言った瞬間、涙が頬を伝った。


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