雨に恋した華
「ありがとう……」


健一は一瞬だけ不思議そうな顔をした後、すぐにいつもの気怠そうな表情を見せた。


「はぁ?お前、何言ってんの?こっちは責められる理由はあるけど、礼なんか言われる筋合いはねぇんだよ」


彼はぶっきらぼうに言うと、面倒臭そうな表情のまま続けた。


「俺、バイトあるから帰る」


「あっ、うん……。じゃあね……」


「あぁ……」


あたしは踵を返して歩き出した健一の背中に向かって、もう一度だけ『ありがとう』と小さく呟いた。


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