雨に恋した華
案内してくれた店員にアイスティーを注文した後、とりあえず気持ちを落ち着かせようと息をゆっくりと吐いた。


そしてドキドキしながら顔を上げ、少しだけ離れたテーブルにいる“王子様”を視界に捉えた。


ブラウン系の髪、一重の切れ長の瞳、少し薄い唇…。


そのどれもが、彼の事をカッコ良く見せた。


だけど…


あたしは、彼の名前も年齢も知らない。


知っている事は、たった一つ…。


『彼が雨の日にだけはこのカフェにいる』って事だけ…。


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