雨に恋した華
あたしが言った後、彼は目を見開きながらさっきよりも不思議そうな表情を見せて、首を傾げた。


「え……?俺の名前?」


彼に訊かれたあたしは、祈るような気持ちでコクリと頷いた。


「あの……。嫌なら……」


「イイよ」


あたしの言葉を遮った彼は、そう言って小さく笑った。


予想していたよりも低い声と、初めて見た笑顔に、心臓がドキッと跳ね上がる。


「虹希(コウキ)だよ」


彼はあたしの瞳を真っ直ぐ見つめながら、優しく言った。


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