雨に恋した華
長い沈黙だと思っていたけど、実際はたぶん数秒くらいだったと思う。


沈黙した空気を最初に破ったのは、彼がクスッと漏らした笑い声だった。


「この状況だと、何か俺が悪い事してるみたいじゃない?」


「あっ、いえっ……!虹希さんは何もしてないですっ!!」


あたしは、慌てて彼の言葉を否定した。


すると、彼はまたクスッと笑った。


「“虹希さん”って呼ばれると、何だか変な感じするから……“虹希”でイイよ」


そして、笑顔でそう言った。


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