僕はその手をそっと握ることしかできなかった
「あれ?椎名くんどうしたの?」


空撫さんい見とれていると、突然名前を呼ばれて現実に戻った。

「はい!すいません!綺麗だったのでつい、ガン見してしまいました」

「はい?何で謝るの?」

「えっ?あのえっと」

歯切れの悪いボクに空撫さんは変なのと笑い出した。

そうだ。

綺麗だったんだ。

妙に納得してしまい、ボクは音楽室の中に入った。

「空撫さんピアノ弾けたんですね」

「5歳の頃から習ってるんだ」

「とても上手ですね」


ボクが素直に感想を述べると嬉しそうに笑ってくれた。

「今度、コンクールに出るんだ」

「そうなんですか!すごいですね」

「うちの家族みんな音楽やってんの。父さんはサックス、母さんはチェロ。じいちゃんは指揮者、望月勇って知ってる?」

ボクでも知っている有名な人だ。
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