僕はその手をそっと握ることしかできなかった
音楽一家の娘さんがどうして剣道をやっているのだろうか?

「なんで剣道やってんのって思ってる?」

「いえ、あの・・・」

「家の近くに剣道の教室があったから、通ってみてたんだ」

「沢田副部長もですか?」

空撫さんは小さく頷いた。

多分、その時から、空撫さんは副部長のことを好きだったんだろうな。

「コンクール、沢田副部長をさそってみたらどうですか?」

「え?」

「素敵な演奏なんです。聞いてもらった方が良いですよ」

「でも、あいつはもうピアノことなんて忘れてるだろうし」

彼女にしては珍しく歯切れが悪い口調だった。

「きっと思い出してくれますよ」

「うん」

顔を赤くした空撫さんは、本当に可愛くて、一途で、空撫さんが幸せになれないなら、この世界は間違ってると思った。
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