僕はその手をそっと握ることしかできなかった
「望月先輩、望月先輩」

「どうした!」

部長と副部長もかけよって来た。

「望月先輩が急に倒れて」

指導を受けていた一年生は泣きそうに目を潤ませていた。

「とりあえず、保健室に運ぶ。誰か、保健医連れて来い」

保健医の指示を受けて、副部長が空撫さんを抱き上げて、保健室へ運んだ。

それから、しばらくして副部長が戻ってきた。

「空撫は大丈夫か?」

部長に報告するところをボクたちは黙って来ていた。

「脱水症状と貧血、睡眠不足もあるかもって。ったく、すまねぇ、今日は空撫は休みにさせてくれ」

「もちろんだ。空撫は女子だってこと失念しちまう。オレの責任だ」

「いや。部長のせいじゃねぇよ。空撫の無茶は今に始まったことじゃねぇ」

それだけじゃない理由を知っているのはボクだけだ。



「えっ!カナちゃん倒れたの?大変じゃない!」

「あぁ、空撫の荷物とオレの荷物、持ってきてもらえるか?」

「分かった」

そこでボクは、どういうわけか。

「ボクも手伝います。藤宮さんだけじゃ荷物持ちきれないと思います」
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