僕はその手をそっと握ることしかできなかった
「空撫どういうことだ」

「沢田くん、聞いてなかったの?部活辞めるって言ったの。yousee?」

「何で辞めるかって聞いてんだよ」

「沢田くんには関係ないよ」

道場の入り口で、二人はもめている。

もめていると言うより、沢田副部長が一方的にいきり立っている。

「お前な、男にフラれたからって、辞めることねぇだろ」

その言葉に空撫さんの目つきが変わる。

胴着の襟元をぐっと締め上げた。

「自惚れてんじゃねぇよ。男にフラれたぐらいでだと、上から物言ってんじゃねぇよ」

ドンと、沢田副部長を突き飛ばして、空撫さんは出て行った。

「大丈夫ですか?」

オレは、副部長に声をかけた。

「アイツ、何を考えてやがる」

沢田副部長は苦しそうに、眉を寄せて、床を叩いた。

空撫さんが何を考えてるかなんて、誰にも分からなかった。

そして、ボクらは再び、空撫さんに驚かされることになる。
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