グリンダムの王族
カインの小さな呟きに、彼の言葉を思い出す。

”泣いてばっかりだな、お前は、、、”

“そんなに固くなるなって、、、”

カインの優しい目が自分を見ている。綺麗な緑色の瞳。

なんだか目が離せなくてぼんやり見つめていると、その顔がそっと近づいてきた。

その意図に気付き、反射的に体を退く。
そんなリズの反応にカインは動きを止めると、むっとしたように顔をしかめた。

「あ、だって、、、」

リズは慌てて周囲を見回した。厨房に居る全員の視線が集まっている。
いくらなんでもこの状態では恥ずかしい。
カインが同じように周りを見ると、全員彼の目から逃げるように顔を伏せた。

「誰も見てない」

カインの手がリズの腕を掴んで引き戻す。
驚く間も無く腰を抱き寄せられ、リズの体はカインの腕の中に閉じ込められた。

「カイン様、、、!」

「、、、俺の我侭も聞いてくれるんじゃなかったっけ?」

リズの瞳を覗き込むように見つめながら、カインが囁く。
その声に動きを止められる。胸が激しく高鳴る。

リズが抵抗を止めたのを感じ、カインはふっと微笑むと再び顔を寄せた。
それに合わせるように、リズはそっと目を閉じた。
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