グリンダムの王族
王城の入り口へと続く広くて長い階段を上へ昇り切ると、そこでは国王とその臣下達がセシルを出迎えた。

国王の隣には、見知った顔がある。
たいして懐かしくもないライトブラウンの瞳。
セシルは自分を迎えたクリスの顔を見て、思わず苦笑した。
彼はとても花嫁を迎えるという表情ではなかった。
ギッとセシルを睨みすえている。

王はそんな息子の様子には一切気づいていない様子でセシルを歓迎した。

「なんと美しい姫君だ。
噂通りだな」

王はご機嫌でセシルに微笑みかけた。

「恐れ入れいります。
暖かく迎え入れて頂いて、
大変嬉しく思っています」

セシルは微笑みを返してそう応える。
クリスの目がふとセシルの胸元に光る金色の首飾りを捕らえる。
そして目を見張った。

王もほぼ同時にそれに気づき、驚いたような顔をした。

「それは、、、」

王の言葉にセシルは彼等の視線の先のものを確認し、その首飾りに触れた。

「あ、これはですね、、、」

言いながらクリスにちらりと視線を送る。

「婚約の印に、クリス王子から頂いたものです」

そう言ってにっこりと微笑んだセシルに、
クリスは目を見開いて固まった。

「なるほど！
いや聞いていなかったので驚いた」

セシルは呆然とするクリスに構わず、言葉を続ける。

「初めてお会いしたときにこの首飾りを頂いて、
まるで婚儀の前からファラント王家に迎え入れて頂いたような気持ちになりました」

王はその言葉に、「そうかそうか、、、」と言いながら満足そうに頷いた。

婚約者と息子がいい関係を築いたのだと理解したのだろう。

クリスはできることなら今すぐセシルを蹴っ飛ばしたい気持ちになっていた。


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