グリンダムの王族
「あるに決まってるだろ!!」

クリスは思わずそう叫んだ。それは嘘だったが、言わずにはいられなかった。

王子の声に、周りに居た人々の目が集まる。

クリスはその視線にハッとしたように我に返り、
逃げるように目を伏せて目の前のワインを飲んだ。
セシルは隣でクスクス笑っている。クリスは思わずそんな彼女を睨みつけた。

「なにがおかしいんだ」

先ほどまで彼女相手にトキメいていた自分がバカみたいに思える。

セシルは楽しそうに、「可愛いぃ~」と言った。
クリスはその言葉にカァッと顔が熱くなるのを感じた。

「大丈夫よ。期待してないから。あなたで満足できなかったら、適当に他をあたるわね」

クリスはその言葉に、信じられない思いでセシルを見た。

その視線に、セシルはニッコリと微笑みを返した。

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