グリンダムの王族
セシルは手を振り上げると、クリスの後頭部を思いっきり平手打ちした。

その勢いでクリスの額が馬車の壁にぶつかる。

「―――いて!!!」

クリスは声をあげて額に手をあてると、ぎっと睨みながらセシルを振り返った。
セシルも負けずに睨み返す。

「言いたいことがあるなら、言いなさいよ!!」

セシルが怒鳴った。クリスは怒りで顔を赤くしつつ、

「何するんだよ!!
お前みたいな乱暴者、見たことない!」

と怒鳴り返した。

セシルはクリスに詰め寄った。

「乱暴者で結構。
なんなの、あんたの態度は!
なんか文句があるなら言えって言ってるのよ。
男らしくない!!」

クリスはしばらく自分を睨むセシルを睨み返していたが、やがて、

「俺はお前達を許さない」

と呟いた。

セシルが、「お前達、、、?」と聞き返す。

「お前達兄弟だよ!!」

クリスがまた声を上げた。セシルはその言葉に少しの間何も言わずにクリスを見た。
そして落ち着いた口調で問いかける。

「、、、リズのこと?」

「当たり前だ!!!」

クリスは顔をしかめつつ答えた。なにを今更という様子だった。

セシルは「ふぅん」と呟くと、また少しの間黙ってクリスを見ていた。

クリスは相変わらずセシルを睨んでいる。
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