グリンダムの王族
同じ頃、セシルは堅苦しいドレスを脱いで湯浴みし、夜着に着替えていた。
セシルの婚約者の印象としては、第一印象通り、”坊や”だった。

―――まぁ、扱いやすいかも、、、。

そんなことを考えながら長椅子に腰掛けてワインを飲む。
ふとそこに、侍女が現れた。

「セシル様。アラン・デイクライト様がいらっしゃいました」

セシルはにっこり微笑むと、

「通して」

と言ってから、「あなたはもうさがっていいわ」と付け足した。



明かりを抑えた部屋の寝台で、日に焼けた逞しい背中に手を這わせる。

部屋を訪れたアランといつものように肌を重ねながら、
セシルは昔を思い出していた。

彼女の母が亡くなってから2年、兄が王位を継いでからというもの、セシルは歯止めが効かなくなってやりたい放題になった。
歳の近い兄のカインが王の後宮に入り浸っているのを横目で見ながら、
セシルだって男の人に興味を引かれていた。
なので、とりあえず身近にいる騎士達に声をかけ、部屋に呼んでみた。

大抵の騎士が「とんでもございません」とか言いながら部屋に来るのを拒否したが、
ごくまれに素直に来る者も居た。

ただ部屋に来た者の中では、緊張のあまり何も出来ずに帰ったものもいる。
それは王妹を目の前にして、ごく当たり前の反応かもしれなかった。

そんな中、部屋に来た上に彼女を満足させてくれた唯一の人が、
今ここにいるアランだった。

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