グリンダムの王族

翌日の午後、セシルはいつも通りの動きやすい服を着て、剣を携えて前庭に現れた。
すでにクリスは馬を用意している。
同行する護衛の騎士も揃っていた。

騎士達がセシルを見て敬礼する。

「こんにちは」

セシルがクリスに声をかけた。
クリスはちらりとセシルを見ると、「遅いぞ」とぶっきらぼうに言った。

そして「あの馬を使え」と言って指をさした。
セシルは「どうも」と言いながら、騎士の連れている馬のもとへ走る。

それはクリスの乗る馬と同じくらいの名馬だった。

手綱を掴み、鞍についた足掛けを使って馬に跨る。
それを黙って見ていたクリスは、その目を騎士に向けると「行くぞ」と言った。



城を出て王都から離れる方向に走り、しばらく行くと王族の墓地と思える所へ辿り着いた。
だだっ広い広野に石造りの壁に覆われた平たく四角い建造物がいくつも並んで建っている。
どれも窓らしきものはなく、入口も重そうな石で塞がれている。
その中でもひときわ大きな墓の前に来ると、クリスは馬をとめて降りた。

どうやらそこが王の墓らしい。
入口の両側には神の像らしきものが墓を護っているかのように置かれていた。

「本当に誰か入ったのか?」

クリスが騎士隊長レニアスに問いかけた。

「分かりませんが、入口の石が動かされた形跡はありました。
可能性は高いと思われます」

クリスは「ふぅん」と言うと、「じゃ、動かしてくれ。入るから」と言った。

「かしこまりました!」

すぐに入口の石を撤去する作業にとりかかる。

それは騎士が2人がかりではあったが、案外簡単に位置をずらすことができた。
そして墓の入口に、人が1人通れる隙間が生まれる。

「男2人で動かせるのね」

セシルがそれを見ながら呟いた。
< 156 / 265 >

この作品をシェア

pagetop