グリンダムの王族
それはそうだろう。これだけ量があれば多少減ってもわかりっこない。

逆に言えば、分からない程度しか盗んでいないということだ。

「切実な感じがするわね。少しでいいから欲しかったんだわ。
、、、もし、盗んだとするならだけど」

そう言ったセシルをクリスが見た。

「切実でも墓を暴くのは犯罪だ」

セシルはクスッと笑った。

「そういう言葉は、余裕のある人しか言えないわね。」

クリスは心外だというように顔をしかめた。

「分かったようなこと言うなよ。
自分だって切実になったことなんて無いくせに」

セシルはクリスの言葉に苦笑した。どうやらいつもの調子が戻ってきたらしい。

「切実になったことはないけど、切実な人はたくさん見てきたわ。
ラルフは犯罪に関しては内容だけでなく理由も重視するもの」

ラルフがまだ王子だった頃、セシルはよくラルフについて各地に視察に行っていた。

兄はセシルにも、自分が王となった時にはカインと変わらない役割を果たせるようにと色々教えてくれた。

犯罪者にも会ったことがあるし、その人たちが裁かれる過程も見せられている。

クリスは何も言わずにセシルを見ていたが、やがて目を伏せた。

「じゃぁ、切実だったら許せっていうのか」
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