グリンダムの王族
クリスの言葉にセシルは「そうじゃなくて」と言った。

「犯罪を犯すに至った原因は解決する必要があるでしょ。
それに罪が変わらなくても、刑の重さは変わるわよ」

クリスは何も言葉を返さなかった。
ただ黙ってしばらく考えた後に、

「閉めよう。
とりあえず目立った被害はない」

と言った。



墓から出てきたクリスとセシルを迎えた隊長は、彼らを見るなり「如何でしたか?」と問いかけた。

「盗まれているかどうか分からない」

クリスの答えに隊長は少し戸惑ったような顔をした。

「盗まれていたとしてもごく少量だ。
その程度なら許してやれと、妃が言ってる」

クリスは続けてそう言った。隣のセシルは思わず目を丸くした。

「誰がそんなことを?」

「切実な感じがするって言ったじゃないか」

「そうよ。だからちゃんと理由を聞いてあげなさいって言ったのよ。
誰も見逃せなんて言ってないでしょ。
私に責任押し付けないでよ」

目の前で言い合いを始めた王子と王子妃を、隊長は困ったように見つめていた。

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