グリンダムの王族
「なぜ盗んだの?」

セシルは続けて聞いた。相変わらず彼らに目線を合わせている。クリスはそんな彼女をじっと見ていた。

「子供が、、、飢えていました、、、」

男が戸惑いつつ、そう答えた。

クリスはその言葉に、「なに言ってるんだ」と声を上げた。

「お前達、都市カレフに住んでいるんだろ?
あそこの収穫の状況からして、飢えるような状態になるはずない」

王子の言葉を背中に聞きながら、セシルは「ああ言ってるけど、あなた達は小作人?」と聞いた。

小作人とは自分の土地を持たず、人の土地の収穫のために働く者のことである。
その地主から賃金をもらって生活する。

地主によっては賃金を出し惜しみする者も居るかもしれない。
けれども男達は首を振った。

「土地は小さいながら持っていますが、納税するのが精一杯です、、、」

セシルがアレクサンドル王を振り返る。王は顔をしかめていた。

「そんな重税を課した覚えはないが、、、」

セシルが男達に目を戻す。

「昔から納税で精一杯の生活を?」

その質問に男が首を振った。

「おととしからの急な増税で、一気に生活が変わりました、、、」

男の言葉にまたセシルは王を振り返った。王は目を丸くしている。

「私は増税などしていない」

王がそう言うと、3人の男達は驚いたように固まった。
セシルがその反応を確認し、立ち上がった。

「話がおかしいわ」

セシルはそう呟きつつ、王を見た。
< 161 / 265 >

この作品をシェア

pagetop