グリンダムの王族
「アレクサンドル王、すぐにカレフの領主に話を聞くべきだと思います。
税の徴収は領主を介して王都に届いていると思いますので、カレフからの納税額が例年と変わっていないなら、増税を偽って、途中で搾取している人物が居る可能性があります」

アレクサンドル王は呆然とセシルを見ていたが、隣に立つ宰相を振り返ると、

「すぐ手配しろ」

と指示した。

宰相は「かしこまりました」と言って頭を下げた。



「予想通りだったのか?」

広間を出て並んで歩きながら、クリスが聞いた。

「全然。なんか大きな話になりそうね」

セシルが答える。

そして、

「2年近く気づかれずに済んだ原因をはっきりさせないと、、、」

と、独り言のように呟く。

クリスはじっとセシルを見ている。
セシルはその視線に気づくと、

「、、、でもそれは私の仕事じゃないんだから、”妃が言ってた”っていうのは止めてよ」

と、慌てて言った。

「、、、俺が王に言う」

クリスが言った。セシルが驚いて目を丸くした。
クリスが足を止める。セシルもつられて止まった。
少しの間、2人は何も言わずにお互いを見ていた。

「今回のことに関しては、、、」

クリスはそこまで言って言葉を切ると、セシルから目を背けて俯いた。

「一応礼を言っておく」

そして、「じゃぁな」と言うと、呆然とするセシルを置いて足早に去っていった。

セシルはそんなクリスの背中を、しばらく見送っていたが、

「、、、気持ち悪い」

と、ぼそっと呟いた。
< 162 / 265 >

この作品をシェア

pagetop