グリンダムの王族
夜も更けた頃、カインはいつもの通りリズの部屋に居た。

ラルフに釘を刺された後も、結局毎晩のように訪れている。
すでにカインの中で、ラルフの後宮の姫君達への興味は消えうせていた。

カインは寝台に横になった状態で片腕を枕にして、寝台のサイドテーブルにお酒のビンとグラスを運んできたリズを見ていた。

亜麻色の長い髪が薄暗い部屋のわずかな灯りに照らされて、輝いているように見える。

身にまとっている絹の夜着が、先ほどまで触れていた彼女の白い肌をよりいっそう艶かしく映し出す。

長い睫を伏せたその表情は大人びた色香を漂わせ、自然と目を奪われていた。

じっと見ているとやがてその視線に気づいたのか、リズの瞳がカインに向けられた。

目が合うと、柔らかく微笑みを返す。
穏やかで綺麗な笑顔だった。

”リズに溺れるくらいなら、俺の側室と遊んでろ”

カインの頭にラルフの言葉が蘇る。
カインはリズから目を離すと、腕枕を外して仰向けに横になった。
そして宙を見ながらため息を漏らす。

「、、、どうかしましたか?」

リズが戸惑ったように声をかけた。

「いや、、、。
困ったなと思って、、、」

カインの言葉にリズが改めて、「どうしたんですか?」と問いかける。

「なんでもない、、、」

カインは目を閉じた。
少しの間をおいて、グラスにお酒が注がれる音が聞こえる。
その優しい水音を聞きながら、カインは「リズ、、、」と声をかけた。

お酒を注ぐ音が止まる。
そして「はい」と応える声がした。

「、、、俺、そのうち正妃を迎えると思うけど、、、」

そこまで言って言葉を切る。そしてそっと目を開いた。

「、、、いい?」
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