グリンダムの王族
ファラントとグリンダムの会談は、その後速やかに設定された。

会談の申込みを受けてから1ヵ月後、ファラント王国にグリンダム王国の王弟が訪問することとなった。

そして会談の日の午前中、グリンダムの一行は無事ファラントに到着した。

カインが到着したとの知らせを聞き、セシルは前庭に向かった。

カインの乗る馬車が城内にゆっくりと入ってくるのが、城から前庭へと続く階段の上からよく見える。

ファラント国王とクリスがすでに出迎えのため待機している。
ふとセシルの目が、馬車を護る騎士達の一行を見て固まった。
思わず足を止める。
彼らの先頭にはアランが居た。

懐かしい黒髪の騎士―――。

セシルは立ち尽くしたまま、その姿を目で追っていた。
アランが同行するということは、全く想像していなかった。
むしろそれは避けるだろうと思っていた。
ラルフがアランを自分に会わせるはずはないと。

「、、、ひどいわ、ラルフ、、、」

小さく囁いた声は、ひどく掠れていた。



カインは馬車を降りると、王と王子に出迎えられた。

「遠方よりはるばるお越しいただき、有難うございます。」

王がそう言った。

「お忙しい中会談の場を設けて頂き、こちらこそ有難うございます」

カインはそう挨拶を返すと、ふと妹の姿を探した。
クリスの隣には居ない。
視線を巡らすと、城の入り口に続く階段の上で立ったままの彼女を見つけた。
じっとカインを見下ろしている。

彼女が動けない理由をカインはよく分かっていた。

「妹が元気そうでなによりです」

カインはそう言ってクリスを見た。

クリスは「あぁ、、、」と言いながらセシルを振り返った。
そして突っ立ったままのセシルに怪訝な表情を浮かべる。

ふとクリスの目が、馬から下りた騎士達の動きにつられるようにそちらに向けられた。
そして固まった。

王子にじっと凝視されて、アランが思わず動きを止める。

なぜ自分を見ているのか分からないのだろう。
アランは王子の視線を受け止めると、とりあえず頭を下げた。

クリスはその動きで自分が騎士を見ていたことに気づき、目を逸らした。
その場の妙な空気に、カインは瞬きをしながらクリスを見ていた。

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