グリンダムの王族
「大丈夫」

「大丈夫じゃない!!」

「やだ。行く」

言いながらセシルに抱きつく。

―――駄々っ子か!!

セシルは抵抗するのも疲れて大きなため息をついた。

―――憎まれ口の方がマシなんだけど、、、。

いったい何をきっかけにどんな魔法がかかったのやら。
まさかクリスがこんな風になるとは全くの予想外だった。

しかしどう変わっても、子供なのは変わらないらしい。
セシルはなんだかどっと疲れた気がした。



ファラント城に戻ると、セシルは逃げるように自室に戻った。

クリスが「後でね」とか言ったような気がしたけど、聞こえなかったことにした。

部屋に戻り窮屈なドレスを脱ぎ捨てると、のんびり湯浴みをする。
夜着に着替え寝る支度を済ませると、寝台で横になる。侍女はとっくに退出していた。
すっかり遅くなってしまったので、もう眠りたい。
そう思っていたら、部屋の扉が開く音がした。

セシルは深いため息をついた。

「ほんとに来た、、、」

独り言のように呟きながら体を起こす。
予想通りのクリスがセシルの視界に現れた。
クリスはセシルの姿を捕らえると、足早に側に寄って寝台に乗ってきた。

セシルはそんな彼を呆れたような目で見ていた。
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