グリンダムの王族
ゴード城の見張りの兵士は、見張り塔の上でついうたた寝をしていた。
ふと彼の耳に馬の蹄の音が届く。
夢かうつつか分からないその微かな音で彼はぼんやりしつつ目を開けた。
そして自分が寝ていたことに気付く。
ハッとして頭をふると、両手で頬を叩いた。
気合を入れなおし再び見張りの姿勢に入る。
そんな彼の目に、信じられないものが映った。
暗闇でできた海に、波が押し寄せてくるように見える。
それは王都を縫って真っ直ぐ近づく、騎馬の大軍だった。
見張りの兵士は、見たこともない光景にとっさに反応できなかった。
何が起きているのか分からない。
けれども確実に城へ向かって近づくそれに、言い知れない恐怖を覚える。
「、、、て、、、敵襲だ、、、」
彼は呟くと、慌てて立ち上がり、手に持っていた笛をくわえた。
そして力いっぱい息を吹き込んだ。
深夜の城に敵襲を知らせる笛の音が響き渡る。
今まで侵略を繰り返したゴード王国で、侵略される側となったのは初めてのことだった。
その笛の音が届くまでに時間がかかり、その意味を理解するまでにさらに時間がかかった。
ゴードの騎士達が動き始めた頃、グリンダム軍は城の間近へと迫っていた。