グリンダムの王族
「なにがおかしいんだよ!」

クリスは頭にきてそう言った。ひとが真剣に話しているのに、笑い飛ばすとは何事なのか。
クリスの怒りが伝わらないのか、セシルの笑いは止まらない。

「だって、、、。そんな理由って、、、。
あなたって、ほんと甘やかされて育ったのね」

セシルの言葉にクリスの頭に血が上った。
1歳しか変わらないのに、また子供扱いだ。

「人の話を茶化すなよ!!
そういうところが信じられないんだ!」

クリスはライトブラウンの瞳に怒気をにじませてセシルを睨んだ。

セシルは、「茶化してるわけじゃないけど」と言って彼を見ると、

「あなた自分の立場分かってる?」

と聞いた。

クリスは何も言えずにセシルを見た。

「第一王子なんでしょ?いずれファラントの王になるんでしょ?
国のために結婚するのが当たり前じゃない。
好きだとかなんとか、関係ないわよ。
とんだ甘えん坊だわ」

セシルの言葉に、クリスは思わず顔をしかめる。

「好きで第一王子に生まれたわけじゃない、、、」

思わず呟いた言葉にセシルはふっと笑った。

「自分の運命を選んで生まれてこれる人なんて居ないのよ」

―――とてもそんな風には割り切れない、、、。

クリスはそう思いながら、口には出せなかった。
セシルは話は終わったとばかりに立ち上がった。

「じゃ、剣の相手はファラントでね。」

そう言うと、クリスの返事も聞かずに去っていく。

残されたクリスは、暗い気持ちでただ俯いていた。

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