グリンダムの王族
至極当然の理由だと思えた。けれどもカインは少しも動じずに、クスッと笑った。

「ラルフの側室は、俺の側室でもあるから」

リズは言葉を失った。そんなことは今初めて聞いた。慌てて首を振る。

「私は、、、娼婦ではありません、、、。
ラルフ様以外の方を、受け入れることはできません」

必死でそう言った。ラルフはリズに興味はない。
ラルフの側室でいれば誰にも汚されることはないはずだった。
カインはそんなリズの言葉は本当に予想外だというように、目を丸くして2,3度瞬きした。

「そんなこと言われたの、初めてだな」

彼は独り言のように言いながら、靴紐を解いて固そうな靴を脱いだ。
そして寝台に乗ってくる。
リズは慌てて体を退いた。
けれどもその腕を捕まれ、あっさり引き止められた。

「逃げるなって」

寝台に座ったカインは、リズの腰を抱いて引き寄せ、その体を自分の胸の中に引き込んだ。

「やめてください!」

リズは慌てて逃げようと体をよじったが、カインの腕に捕らわれて動けなかった。
すぐ側にカインの顔がある。
目を合わせないよう、必死で顔を背けた。

そんなリズの耳に、カインの唇が触れたのが分かる。
軽くついばむ感触に、リズの体は恐怖で強張った。

「、、、名前、なんだっけ?」

耳元で囁く声が聞こえる。
彼の手がリズの髪に触れている。それをゆっくり撫でながら、耳をなぞるように彼の舌が動く。

リズの背筋に悪寒が走った。

「お願いします、、、やめてください」
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