グリンダムの王族
「ここに居るらしいって報告があった。
見張りの兵士がちゃんと見てんだぜ。
こっそり動いたつもりだろうけど」

彼の言葉に悲しくなる。

自分が必死で抵抗しても、なにひとつこの人達に効果はない。
どうあがいても無駄だ。そう思ったら我慢していた涙がまた出てきた。
膝に顔を埋めて泣き出したリズに気付き、カインは困ったような笑みを浮かべた。

膝を抱いて小さくなっているリズの肩に腕を回すと、その耳に唇を寄せる。

「なんで泣くんだよ、、、」

耳元で囁くようにそう問いかける声に、リズは何も答えられずに泣き続けた。

「俺の側室じゃないから、受け入れられないって言っただろ?
だから俺の側室にしたんだよ。後はどうすればいいわけ?」

小さく囁くカインの声に怒りはなく、ただ純粋に分からないから教えてくれという様子だった。

「、、、怖いんです」

リズが涙声で小さくそう呟いた。
自分で言った言葉に、また涙が出る。
誰の側室だとか、そんなことはただ逃げるための口実だった。
本当は何よりもまず怖かった。

「何が、怖い、、、?」

カインがまた問いかける。
その手がリズの亜麻色の髪を撫でている。
泣いているリズを慰めようとしているらしいことが、その手から伝わってきた。
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