グリンダムの王族
「ここでの楽しみを見つけられそう?」

意外な問いかけに、リズはとっさに答えられなかった。

―――ここでの楽しみ、、、。

そんなことを考えたこともなかったというのが正直なところだった。
リズが困っていると、セシルはふふっと笑った。

「それどころじゃないって感じかな。
自分で望んで来たわけじゃないし、夫もコロコロ変えられて、嫌になっちゃうわよね」

そう言ってセシルはリズを見ると、「でも、、、」と言葉を続けた。

「嘆いていても変わらないなら、楽しむ方法考えたほうが得よ」

リズはセシルの綺麗な笑顔をじっと見ていた。
彼女の言葉が正しいのは分かるのだが、それを実行に移せるかどうか、正直分からなかった。
セシルはそんなリズを見ながら、「私もね。もうすぐ結婚するの」と言った。

リズはその言葉に、突然思い出した。
彼女はクリスの婚約者なのだ。

忘れかけていた胸の痛みが蘇る。
それをごまかすように目を伏せると、「おめでとうございます、、、」と言った。

「全くおめでたくないわ」

セシルは笑い混じりにそう言った。
リズは驚いて目を上げた。セシルが笑みを浮かべてリズを見ている。

「お互い全く愛のない政略結婚よ。相手もそうだと思うけど、私も夫となる人を愛せそうにはないわ」

「、、、そう、ですか、、、?」

リズは思わず問いかけた。リズの中ではクリスは明るくて優しい人なので、”全く愛せない”と言い切ってしまうのが不思議な気がした。

「クリス王子を、好きだった、、、?」

クリスの名前に、リズの心臓は大きな音を立てた。とっさに答えることができない。

まさか”好きでした”なんて言えるはずもなく、リズは「とんでもないです、、、」と言って首を振った。

「どういうところが好きだったの?」

否定したのに、セシルは重ねて聞いてきた。リズは困惑して俯いた。

「私が結婚相手だからって気にしてるの?
さっきも言ったけど、私は彼に全く魅力を感じてないの。
だから教えて欲しいんだけど。どんなところがいいのかなって」
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