雑踏のエントロピー


スクランブル交差点の信号に捕まって、足を止めた俺の違和感を着慣れてしまったスーツが取り除く。


もう、あの頃の俺じゃないと、馴染んだ雑踏の中で念を押される。


そんな日常にも随分と慣れた。

女の趣味も随分と変わった。


大人しく、従順で心優しい妻に満足している。
可愛い子供の為に毎日あくせく働いている。


自分で敷いたこのレールからはみ出す気など更々ない。




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