これが俺の体験
お兄ちゃん
「お前は……もう、助からない。手遅れなんだ」
「………………」
お兄ちゃんは目を見開いた。
信じられないって顔だ。
「どうして……?」
「お前は……ガンなんだ。末期の大腸ガンなんだよ……」
「僕が……ガン……」
重い。
あまりに重いよ。
ガンなんて、助からない病気なんて……。
僕は……聞きたくなかった。
お兄ちゃんの泣き顔が胸に痛いから。
「だが、ワシはある賭けに出る。正、お前を東京に連れて行く」
「東京……?」
「そうだ。そこでなら少しは助かる見込みはあるらしい。だからお前を東京の自衛隊病院へ連れて行く」
東京。
いつ聞いても遠い。
そんな場所でお兄ちゃんは治るだろうか。
僕は不安で仕方なかった。