これが俺の体験
『朝早くにごめんね。寝てたかい?』
「ううん!起きてたよ。お兄ちゃんは大丈夫?」
「嘘が下手だな良は」
「ガウ!」
母親のいらない一言を獣の真似で誤魔化す。
だって恥ずかしいんだもん。
寝てたなんて知られたら。
『こっちは元気だよ。みんな元気?』
「うんうん元気だよ」
嬉しくなり、ボクは笑顔で答えると、お兄ちゃんから声が聞こえなくなった。
「お兄ちゃん?」
心配になり、問いかけると、お兄ちゃんは……泣いていた。
『良……お兄ちゃんは……みんなに会いたいよぉ……』
鼻声になりながらお兄ちゃんは言った。
お兄ちゃん……ボクは助けてあげたいよ。
だけどボクは何も……出来ないよ。
『みんなに会って……笑いたいよ……ボクは死にたくないんだよぉ』
「お兄ちゃん……」
ごめんね。
ごめんねお兄ちゃん。
ボクが役に立てなくて。
ボクは自分の非力を感じ、泣いていた……