これが俺の体験
お兄ちゃんは勿体つけたように、自分の腕を指す。
「え……?」
ボクはすぐに気付いた。
ない。
つい最近まであった、細い管が右手にない。
点滴の管が……。
「聞いて皆!僕、退院出来るんだ!」
興奮したように話すお兄ちゃんは目を輝かせていた。
「退院……?」
「一時的だけど、正月は皆で過ごせるんだよ!」
一時的……それでも嬉しい!
お兄ちゃんが家に帰ってくるんだ!!
ボクは本当に嬉しくて、この日、今までの中で最高の病院滞在時間を記録した。
帰ってもなかなか寝れなかった。
帰って……くる!
今から3ヶ月後にはお兄ちゃんと家族が揃うんだ!