これが俺の体験


枕元に何かの気配──人が立っていた。


──扉を開きたいか?

「え?」


──自分の力を知りたくないのか?


頭に響く声はとても暖かかった。

誰かはわからないけど、ボクは願う。


──知りたい。


ボクは確かに頷いた。


──ならば……手を伸ばすがいい……。全てを知る覚悟があるならばな……。


ボクには理解出来ない。

何を言っているか解らなかったんだ。

ボクは右手を伸ばし、何かが指先に当たった。


それは自分が寝るベッドの──おっちゃんがタバコをしまう、引き出し。

ボクは取っ手をつかみ、一気に引っ張った。


「いて!」


頭に何か当たったのか、痛い。

しかもなんか硬かったし……。

ボクは暗闇を手探りに探し、それをつかんだ。


「これは……」


型からして丸い。
いや、横長に丸い。

ボクは立ち上がり、電気をつけた。


暗闇にチカッと光り、部屋が明るくなった。

立ったまま、ボクは枕元を見る。

おっちゃんのタバコともう一つ、マンガで見たことがあり、泥棒さんの風呂敷模様の巻物があった。


……後に知るが、巻物の柄は唐草模様、紫色である。

──これが……ヒントなのかな?


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